テーマ:対人サービスにおける権利擁護~障がいのある人の地域生活を考える~

日時:令和元年11月7日(木)16時30分~18時30分

場所:りゅうゆう館 文化ホール(龍郷町)

【講演】東洋大学社会学部社会福祉学科 教授 高山直樹氏

【シンポジウム】

(報告者)

・恵 朝子氏(名瀬徳洲会病院)

・榮 益宏氏(瀬戸内町社会福祉協議会)

・川畑博行氏(奄美市保護課)

・助言者:高山直樹氏(東洋大学)

参加者:126名(資料を準備した数なので、実際はそれ以上の方が参加していました)


前半に高山先生の講演をしていただき、後半が地域の関係者に登壇していただいてシンポジウムを行いました。

先生の講演では、「我々がつい口に出るセリフがとして「シカタガナイ(仕方がない)」という言葉がある。福祉の構造としては、そこには、マンパワーが足りない、社会資源が足りない、障がいが重いから、法律や制度で決まっているからということを理由に、結局は利用者の喜び、職員の喜び、組織の改革のチャンスを奪ってしまっている。こういう中から始まるのが福祉の仕事であり、踏ん張るためのネットワークが必要になる」ということを話されました。

我が国の福祉構造の問題として、サービスメニューに当てはめて管理、保護してしまい、利用者の自立より適応が目的になる危険性がある。その中で利用者のサービスに上手く乗らない形を問題行動として見てしまう。そもそも第三者から、人生や生活の計画を立てられることはどうなのか、キチンと説明責任を果たせているのかという問いかけがありました。「私の中に、私の組織に『内なる差別』はないのか?」「障がいのある人、高齢者、患者を対等の人間としてとらえているのか?」ということを意識しながら、この仕事は「不全感(葛藤)」がなければいけない。ダメなのは逆に葛藤しない人だという言葉に、自身の支援や考えを改めて見つめなおす時間となりました。

「意思決定」と「自己決定」の違いや「居場所」をどう作っていくのかということを考えながら、日々の実践をしていく必要があると思いました。

後半のシンポジウムでは、それぞれの立場から、ついつい困りごとを未然に無くそうという周囲の考えから福祉サービスを提供してしまうことや、生活保護に至る前の生活困窮という入り口相談での支援のあり方が報告されました。又、障がいのある当事者としての立場からは、自らの努力で障がいを克服するためにリハビリを行い車の免許を取っても、駐車場の狭さやコインパーキングの使いづらさ、災害時の避難所でのトイレが使えないために避難さえできないということなど、社会の障壁はたくさんあるという報告があり、障がいがあっても普通に権利の守られた暮らしをするためには、行政を含めて地域全体で考える必要があると再認識させられました。

研修アンケートでも「先生の話がわかりやすく頭の中が整理できた」「障がい当事者の目線で考えないと社会の障壁に気づけなかった」「意思決定できないのは、本人の問題としてしまっていた気がする。意思決定できる環境づくりが大切だと思った」「本人が意思決定できるための安心した居場所づくりやワクワク的居場所を作っていくことが大事だと学んだ」ということ意見が多く、参加者には気づきの多いとても有意義な研修となりました。

会場入り口では「就労支援事業所ユーアイ工房」が商品の展示販売を行い、地元龍郷町の地域の方々や、遠くは瀬戸内町の民生委員の方も参加され、少しづつ地域の理解も深まっていくような場が共有できたと感じました。